石原の責任論(7)

石原の責任論(7): マツチポンプ#2

:この6月、ロンドン五輪の陸上競技男子やり投げ予選で優勝し、初の五輪代表に内定した二十歳の早大生、ディ-ン元気選手。父は英国人、母は日本人だ。その父の祖国での五輪出場に最高の親孝行となった。

・場内での優勝インタビューで、「サンキュー、ダディー(パパ、ありがとう)」と、スタンドに駆けつけた父に向かって叫んだ。何ともほのぼのとした父子愛を感じさせるものだった。それに比べて、石原父子はどうだろうか。

 :9月26日の自民党総裁選。5候補が乱立するなか、一回目の投票では過半数の獲得に至らず、上位2人による決選投票となった。その結果、安倍晋三石破茂を破り、第25代総裁に選出された。

 ・与党民主が自滅するなかでの総裁選だっただけに、来るべき衆院選で野党自民が第一党に返り咲き、新総裁は首相となる可能性をはらんでいた。

・そのため長老三衆の動きは早かった。最大派閥の影の領袖・森喜朗(町村派42人)、引退後も影響力をもつ重鎮・青木幹雄額賀派28人)、それに古賀誠古賀派32人、一部旧谷垣派)は、8月には都内で密談を重ねていたという。

・派閥の重鎮支配を嫌い自分達と距離をおく谷垣禎一総裁に出馬を断念させ、自分達になついている石原伸晃幹事長(山崎派)を「傀儡」候補者として擁立する企てにでた。これが「平成の光秀」の誕生だった。

・9月2日の地方講演で、石原は「谷垣を支えるために政治をやっているのでない」と発言し、谷垣降ろしを宣言する。それまで「谷垣が出馬した場合は支援する」と繰り返し表明していた男が、長老の企てにのせられ谷垣を裏切った。

・今回の自民党総裁選は、国会議員票(198票,棄権1票)と全国47都道府県連ごとに開票された党員・党友投票に基づく地方票(300票)の合計で争われた。

・石原は、長老世代が支持固めした国会議員票96票を獲得し3位につけたが、現地の民意の声に近い党員票は38票にとどまり脱落した。自らを世代交代の担い手とアピールしながら、裏では長老世代に支持を媚びるさもしい行為こそが敗因だ。

・本来は執行部が同じ思いで一体となって、再選に向け現職の総裁を支えるものだが、幹事長という家臣の身分で、主君の総裁に背いた「謀反人」というイメージが定着してしまった。

・かって、父親の石原慎太郎も息子同様だった。国会議員時代には、議員仲間からの人望もなく、「派閥を率いて子分にカネを配る」だけの実力もなかった。ただ、特権意識とプライドだけは強く、誰もこの男を相手にしなくなった。その証拠に、1989年の総裁選の時には息子同様に、立候補に必要な20人の推薦人すら集めることに苦労している。息子が平成の「光秀」なら、当時の党内石原慎太郎の存在は、選挙時の「人寄せパンダ」だった。自分でもそれががまんならなかったので、任期途中で議員を投げだしている。

・26日、記者団から新総裁安倍の誕生を聞かされると、都知事石原は「ノット・マイ・ビジネス(自分には関係ない)」と答えている。だが、その答えと裏柄に、自民総裁選は石原の最大関心ごとであったはずだ。そのへんの真相を動画サイトが暴露している。投稿者は、8月19日に自ら魚釣島上陸を敢行したチャンネル桜の社長水島聡だ。石原のお友達でもある。

・動画内容には触れないが、石原が呼びかけた寄附だが、当初は、民間地権者から尖閣諸島の土地不動産購入の資金集めだった。ところが、地権者が国に売却の意向を示すと、あわてた石原が首相野田と密談すると、船だまり、灯台、電波塔といった施設建設の工事資金に流用する話に変えてしまった。サギ行為だ。たとえ数千円でも寄附したなら、返還を要求すべきだ。要求に応じない場合は、石原を集団で提訴すべきだ。都知事の立場での寄附集めは、尖閣購入計画が都議会の同意を得ていることが条件だ。その同意なくしては、購入の主体は東京都ではなく、石原個人にあるからだ。

・本ブログで、以前、「ポンポン山住民訴訟」を取上げた。京都市がゴルフ場予定地を購入したが、購入額が不当に高く、市に損害を与えたとして、市民団体が提訴し、当時の市長に26億円の返還命令がくだされた事件だ。市長は土地購入に市議会の議決を得ていたにもかかわらず敗訴した。

・石原の場合は、議決がないままに、尖閣購入計画を進めたものであり、極めて悪質だ。約14億円の寄附金の返還要求ばかりでなく、米国紙の意見広告費、尖閣の調査費用など尖閣購入の名目で出費された税金の弁済もあわせて、石原個人に請求すべきだ。

 

 

 

追加:

☆「石原伸晃氏支援は都知事との約束」森喜朗元首相
2012年10月1日

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/121001/stt12100108440001-n1.htm

・3年ぶりの自民党総裁選が終わった10月1日、元首相森喜朗は、新聞のインタビューで、次のように告白している。
・「去年3月に石原さんのお父さん(慎太郎東京都知事)と約束をした。だからどうしても石原さんの応援をせざるを得なかった。」
・ そのときに都知事は「必ず息子を頼むよ」と。これは党としての約束なんだ。だから総裁選で私には石原さん以外の選択はなかった。
 

☆「尖閣購入の寄付金を施設建設費に、都知事が自民接触=関係者」

2012年10月4日
http://www.asahi.com/business/news/reuters/RTR201210040076.html?ref=reca

複数の関係者によると、石原慎太郎東京都知事は、尖閣諸島(中国名・釣魚島)の購入代金として東京都に集まった寄付金を尖閣諸島の施設建設に充てるための動きを強めている。すでに自民党などに接触しており、実際に動き出せば日中関係の新たな火種になる可能性がある。

尖閣諸島の購入代金として東京都に集まった個人などからの資金は総額約15億円にのぼる。国が尖閣諸島を地権者から購入したため、これらの資金は残されたままだ。東京都ではこれらの資金を尖閣諸島が有効に活用されるための施設に充当する考えをすでに示している。

・しかし、野田政権は新たな施設の建設には慎重だ。尖閣諸島購入に際しても「長期にわたる平穏かつ安定的な維持管理を図る」(藤村修官房長官)としており、現時点でそのような施設を設置する考えは示していない。玄葉光一郎外相も、島に施設を作ることに関する政府の考えを聞かれ「平穏かつ安定的な維持管理を現時点で行っていると考えている、というのが私の答えだ」と述べるにとどめている。

・これに対して、石原知事は9月、尖閣購入の寄付金に関して、こうした国民の志に応える政権であればその資金を託すとして、自民党総裁選の立候補者に尖閣諸島についての公開質問状を送り、所見を求めた。

安倍晋三候補(当時)は尖閣諸島への船溜まりなどの施設建設について「零細漁民のための船だまりの設置などを検討する」と回答。石破茂候補(同)も「まず地元漁業者からの要望の多い無線中継基地、船だまりなどを設置し、安定的で安全な漁業活動を支援することが考えられる」としている。

・その際、猪瀬直樹副知事はロイターに対し「石破あるいは安倍政権となれば、その時に船だまりの費用をこちらから出す。電波塔や灯台もそのお金を使う」と語っている。

・複数の関係者によると、石原知事側は、自民党に接触し、尖閣諸島購入・活用資金として寄付を受けた15億円で電波塔や灯台建設などの資金に充当してもらうことについて協議した。石原知事は先月、「政権は変わるだろう。新政権がインフラを造る決心をしたら基金として渡す」と述べている。

・自民党の山東昭子参議院議員は、石原知事が野田首相と二人で会った際、尖閣諸島で漁民の利益になるような建設プロジェクトをしたらどうかと問いかけたが、野田氏は何も答えることができなかった、とした。そのうえで、同議員は、自民党が政権を取ることが前提だが「安倍氏も石破氏も考え方は石原氏(都知事)に近く、心は一つだと思う」と述べた。

・自民党の政調関係者は「領土問題についても、総裁になった安倍氏の考えが党の政策に反映されていくだろう」と話している。

政策研究大学院大学の道下徳成准教授は「(尖閣に)灯台を建てたらまた今回のような状態になるおそれがある。中国が強く反応して、デモなどが起こり、また日本企業が襲われたりする恐れもある」と指摘している。